腰の構造でわかる、腰痛の根本的な原因(腰痛コラム①)

こんにちは、萱間です。
今回のコラムでは、厚生労働省が発表する「国民生活基礎調査」でも毎回自覚症状の上位にいる腰痛についてお話させていただきます。
腰痛と一口に言っても、朝起きたときに痛い、座っていると痛い、前かがみの姿勢で痛い、腰を後ろにそらすと痛い、立ちっぱなしで痛いなど、人によって様々なバリエーションがありますが、実はそれらの腰痛には共通の根源的な原因があると考えられます。
さらに、筋肉や骨格に原因があると思われがちな腰痛という症状でも、実は食事や睡眠、ストレスなど、生活習慣も非常に大きな影響を及ぼしています。
今回から始まる腰痛コラムでは、腰痛の原因およびセルフケアについて東西医学の立場から、できるだけわかりやすくお話させていただきますのでお楽しみに!
腰の構造を知ると、痛める理由がわかる
今回は腰痛の原因<西洋医学編>です。
腰という漢字は、月(にくづき)に要(かなめ)から成り立ち、まさに体の要であることが表されています。要であるからには、さぞかし丈夫な頼りがいのある部位であろうと思われるかもしれませんが、実は構造的にはとても不安定な場所です。こちらの腰の断面図を御覧ください。

上半身の重みを支える骨格である腰椎はなんと、こんなにも体の後方に位置しています。腰椎の前方はすべて内臓です。このように、体幹の後方に位置し、力学的に非常に不安定な状態で、上半身の重みを支えつつ、内臓を収めながら、さらに可動性を発揮しなければならないという、かなりの無理を普段私達は腰部に強いているのですね。まずは、腰部は構造的に不安定な場所なんだな、無理させちゃいけないんだなと思ってください(笑)。
実は、この「無理をさせている」ということが原因の根本になっています。
あなたはどのタイプ?痛みの種類でわかる腰痛の発生源
冒頭で紹介した、タイプ別の腰痛を上げると、だいたい下記のようになります。
- 朝起きたときに痛い:血流の低下、腰椎周辺の筋肉や靭帯、それらの間に存在する結合組織などの滑動性の低下
- 座っていると痛い:腰部筋過緊張による椎間板の圧縮ストレス
- 前かがみの姿勢で痛い:腰部筋過緊張による筋内圧の上昇、腰部筋付着部への牽引ストレス、椎間関節包の伸張ストレス
- 腰を後ろにそらすと痛い:椎間関節への圧縮ストレス、腰椎の衝突、椎間板の伸張ストレス
- 立ちっぱなしで痛い:腰部筋過緊張による椎間板の圧縮ストレス、腰部筋内圧の上昇、椎間関節への圧縮ストレス

腰部椎間板や椎間関節などは、腰部を構成する構造の一部のことで、腰痛のことを色々と調べられた方はご存知かもしれません。
重要なことは、腰の筋肉や、椎間板、椎間関節などは確かに最終的な痛みの発生源になっているのかもしれませんが、それは結果であって、腰痛そのものの原因ではない、ということなのです。
腰痛が起こる2つの根本的な原因
では、原因は何か??
答えは非常にシンプルです。
1つ目の答えは腰部構成物(骨や関節、筋肉、椎間板など)への過剰な負荷です。
先程、腰部は構造的に不安定だとお伝えしました。構造的に不安定であるがゆえに、それを安定させるメカニズムが存在します。その安定させるメカニズムが破綻してしまうと、代償として、腰部の構造のどこかに過剰な負担がかかります。その負担のかかり方によって、いろいろなパターンで腰痛が発症するのです。
2つ目の答えは負荷からの回復遅延による負荷の蓄積です。
私達の体を支える筋肉や骨格の構成要素は、同じ姿勢を取る、重いものを持ち続けるなどの負荷から解放されたときに、元の状態に戻るには、その負荷がかかっていた以上の時間を要します。身体にかかった肉体的な負荷は思っている以上に戻りにくいと認識してください。そして、一日活動した身体を回復させるための行動が睡眠です。それらの負荷を有効に回復させる睡眠が十分なされていないと、負荷が回復しきらないうちに、また新たな負荷が加わっていきます。
それらの蓄積は非常に小さなものでも、繰り返していくと腰部構成物を損傷させるのには十分なものとなるのです。
このように、腰痛の原因とは、西洋医学的な腰部構造への負荷、という視点から考えると、安定性低下による過剰な負担とそこからの回復遅延のあわせ技、と考えることができます。
腰を筋肉で安定させると、腰痛は予防できる
さて、ではそのような不安定な構造をどのような仕組みで安定させているのでしょうか。
下図を御覧ください。

腰部の後方に位置する腰椎や腰部筋は腹部と一緒になりコルセットのような構造を作ることにより腰部を安定させています。
腰痛の話の中では腹筋の重要性は非常に有名で、聞いたことが有る方も多いと思います。つきなみな話かもしれませんが、やはりこの腹筋群が適切に働いていないことが腰部不安定性を招くことに繋がります。この腹部というのは東洋医学的に腰痛を考える上でも非常に重要な部位となり、このあたりはとても面白いところです。
では、単純に腹筋をつければいいのか、というと、頑張って筋トレをするのとはまた違います。
大事なことは、適切に腹筋を活動させることができる、ということなのです。
このやり方については、セルフケア編でお伝えしていきますのでお楽しみに。

まずは今日からできる腰痛対策として、しっかり回復させることを意識し、睡眠時間を十分確保することを取り入れてはいかがでしょうか。できれば22時台、可能なかぎりその日のうち(0時前)に寝るように心がけてみてください。 次回は東洋医学的の視点から腰痛の原因をお話させていただきますね。
投稿者プロフィール

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鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・医学博士・慶應義塾医学部漢方医学センター非常勤講師
慶應義塾理工学部物理学科→製薬会社→鍼灸師・鍼灸学校教員→学位取得→独立
鍼灸のある風景を探していたら学校教員から学位取得まで至りました。現在は自分なりの鍼灸のある風景を実践するために、自由が丘で間借り開業をするかたわら、慶應義塾大学病院やCINQでの診療、専門学校講師をしています。
症状はからだと心のサインです、東西医学の観点から、根治あるいは症状緩和への道のりをサポートしていきます。
料理が好きなのですが、時間がないのでYoutubeでレシピ動画をみてエアクッキングをするのがマイブーム。
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