東洋医学で考える不眠【3つのタイプと改善方法】
こんにちは。CINQ(サンク)の高橋裕美です。
皆さんは、よく眠れない時、どうしていますか?
ネットで対処法を調べたり、市販薬を飲んでみたり、ひどい時は病院に行ったりするかもしれませんね。
たどり着くのは多くの場合、西洋医学的な対処法ではないかと思います。
そこで今回は、少し視点を変えて、東洋医学的な不眠の原因と改善策を一緒に考えていきましょう。

なるべくわかりやすく、簡単に説明していきます!
不眠の原因は、心(しん)の不調だった
いきなり知らない言葉!と思った方、大丈夫です。わかりやすくご説明します(^^)
東洋医学では、体の中心部にある大きめの臓器を「五臓(ごぞう)」と言います。これは、生きるために中心的な役割を果たしている大事な臓器です。
五臓なので、もちろん5つの臓器を意味します。その中の1つが「心(しん)」です。
(ちなみに他の4つは、肝(かん)・脾(ひ)・肺(はい)・腎(じん)です)
よく、「心(しん)=心臓」と思われがちですが、正確には違うものです。
心(しん)って何?

心(しん)には、こんな役割があります。
- 血を脈中に押し出して、全身に栄養を届ける
- 思考や意識、記憶、判断など、すべての精神活動の中心となる
- 体の臓器や機能が、互いに協調して働くように指示する
1の役割は、西洋医学でいう心臓と似ていますね。
でも2と3は、心臓にはない働きです。
心臓は、脳や神経からの命令で、血液を全身に送り出します。
でも心(しん)は、どこかから命令を受けるのではなく、むしろ体の他の部位や、精神活動に対して命令する司令塔です。
この点でも、心臓と心(しん)は違うということがわかります。
血(けつ)って何?
先ほど、心の「1.血を脈中に押し出して、全身に栄養を届ける」という役割は心臓に似ている、と言いました。似ているというか、全く同じだと思いませんか?
実は、少し違うんです。
それが今回、不眠を考える上でもう一つの鍵となる「血(けつ)」の存在です。「ち」ではなく「けつ」と読みます。
血(けつ)は、いわゆる血液のことも意味しますが、それだけではありません。
精神活動のもととなる物質でもあります。血があるおかげで、ものごとを考えたり、判断したり、記憶したりすることができると、東洋医学では考えます。

つまり、心(しん)は栄養と一緒に精神活動のもとも全身に送り届けているのです。
心が不調だとどうなるの?
ここまで、心(しん)と血(けつ)の役割について、ご説明しました。
西洋医学でいう心臓や血(ち)との違いは、なんとなくご理解いただけたでしょうか?
役割を一言でまとめると、
血が十分にあり、心の機能が正常であれば、体全体に栄養がいきわたり、精神活動も安定する
ということでした。
では逆に、心が不調になるとどのような症状が起こるのでしょうか?
心の不調のタイプによっても多少異なりますが、一般的によくみられる症状は以下の通りです。
心(しん)の不調でよく見られる症状
動悸、胸のあたりがほてる、胸のあたりが痛む、不眠、よく夢を見る、物忘れ、うわごと

心の働きと照らし合わせて考えると、このような症状が出るのも納得ですね。
次はいよいよ、今回のテーマである不眠の改善方法について、タイプ別に考えていきます!
タイプ別!不眠の原因と改善方法
心(しん)が不調になると、不眠になることはわかりました。
では、具体的にどのような原因で心が不調になると、不眠につながってしまうのでしょうか?
不眠の原因となる心の不調は、大きく次の3つに分類できます。
- 心に栄養が足りず、心の正常な機能が保てなくなり不眠になる
→心血虚(しんけっきょ)タイプ - 心が発熱し、その熱によって精神活動が興奮状態となり不眠になる
→心火亢進(しんかこうしん)タイプ - 1と2の両方
→心陰虚(しんいんきょ)タイプ
では、それぞれのタイプについて、原因と改善方法を詳しく見ていきましょう!
ご自身がどのタイプに当てはまるのかチェックしてみて下さい。
心血虚タイプの不眠
血(けつ)が足りなくなることを、東洋医学では血虚(けっきょ)と呼びます。
心血虚(しんけっきょ)は、血が不足し、心にも血が行き届かなくなって様々な症状を起こす状態のことです。
心血虚では、不眠以外にも以下のような症状が出ることがあります。当てはまる症状がないかどうか、チェックしてみて下さい。
心血虚で起こる症状
不眠、夢をよく見る、動悸、めまい、立ちくらみ、物忘れ、視力が悪くなる、目がかすむ、顔や唇の血色が悪い、肌がカサカサする、手足のしびれ、月経血の減少、月経の遅れ、閉経など
もしこの中にあてはまる項目が沢山ある場合、あなたの不眠の原因は心血虚かもしれません。
以下の原因の中で思い当たる節はないでしょうか?
心血虚の原因として考えられること
- 血を作るための栄養が摂取できていない
- 大量の出血があった
- 消化吸収機能が低下し、血を作れていない
- 感情の起伏が激しく、血を消耗してしまっている
心血虚が原因で不眠になっている方は、以下のことに気を付けてみましょう。
不眠だけでなく、心血虚が原因で起こっているその他の症状も一緒に改善されるかもしれません。
心火亢進タイプの不眠
心火亢進(しんかこうしん)というのは、簡単に言ってしまうと、心が発熱して様々な症状が起こる状態のことです。
これは、心自体が何らかの原因で発熱する場合もあれば、肝や腎といった他の五臓の不調の影響を受けて心が発熱する場合もあります。
心火亢進では、不眠以外に以下のような症状が出ることがあります。当てはまる症状はないでしょうか?チェックしてみましょう。
心火亢進で起こる症状
不眠、胸のあたりがほてる、顔が赤くなる、動悸、喉が渇く、尿が黄色い、便が硬い、舌先の痛み、舌が荒れるなど
いかがでしたか?この中にあてはまる項目が沢山ある場合、あなたの不眠の原因は心火亢進かもしれません。
心火亢進の原因もチェックしてみましょう。
心火亢進の原因として考えられること
- 気候の急な変化(寒さや暑さ、風、湿気、乾燥など)に対応できず、それが体内で熱となって現れる
- お酒やたばこ、辛いものなどの刺激物をとりすぎていて、それが体内で熱となって心にも影響を及ぼす
- 感情の異常によって、精神をコントロールしている心が発熱する
心火亢進が不眠の原因になっている方は、以下のことに気を付けてみましょう。
不眠だけでなく、心火亢進が原因で起こっているその他の症状も一緒に改善されるかもしれません。
心陰虚タイプの不眠
心陰虚(しんいんきょ)は、心に陰液(いんえき)が不足して様々な症状が現れる状態のことです。
陰液というのは、体の中にある全ての液体を意味します。ということは、血も陰液の中の一つです。
陰液が不足すると、同時に血も不足することになるので、心陰虚では心血虚と同様の症状が現れます。
また、陰液には体の熱を冷ます作用があるので、陰液が不足すると、体に熱がこもっていまいます。
つまり、心の陰液が不足して心陰虚になると、心に熱がこもってしまうため、心火亢進と同様の症状が起こるのです。
このような理由から、「心陰虚=心血虚+心火亢進」と考えると、症状や改善策がわかりやすいと思います。
心血虚タイプと心火亢進タイプのどちらにも当てはまる項目がたくさんあった方は、心陰虚タイプの不眠の可能性が高いです。
ぜひ、心血虚タイプと心火亢進タイプの両方の改善方法を合わせて実践してみて下さい。
まとめ
東洋医学で考える不眠の3つの原因は、なんとなくご理解いただけたでしょうか?
今回お話したことのポイントは、以下の通りです。
心(しん):全身に血(けつ)を送り出している重要な臓器。精神活動の中心となったり、臓器が協力して働くように指示を出したりしている。
血(けつ):体の栄養や精神活動のもととなる物質。
不眠の原因となる心の不調:心血虚タイプ、心火亢進タイプ、心陰虚タイプの3つに分けられるので、それぞれのタイプにあった改善策を行う。

不眠でお悩みの方は、ぜひご自身がどのタイプの不眠なのかをチェックして、お体にあった対策を行ってみて下さい。
難しく考えず、1日1回深呼吸をするなど、簡単にできることから始めてみて下さいね。
投稿者プロフィール

- 鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・CINQ院長
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鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師。
早稲田大学スポーツ科学部卒業後、楽天で営業の仕事をしていましたが、鍼灸師になりたくてなりたくて我慢できず、転職しました。
大正15年から続く治療院や、有名美容鍼灸サロンでの施術経験、講師経験を経て、CINQ院長になりました。
歩くのが好きで、鎌倉の友人の家まで50km歩いて行ったことがあります。
痛みのない鍼と納得できる説明がモットーです。
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