今の睡眠不足が老後の認知症リスクを高める理由

睡眠不足が認知症を発症させる?

慢性的な睡眠不足が認知症発症の可能性を高めると言われています。

ただ、これについては、認知症の初期に「眠れない」という不眠症状が起きることがよくあり、そのため、睡眠不足が認知症を引き起こすのではなく、そもそも認知症になっているから眠れないのではないのかというふうにも考えることができます。

「鶏が先か卵が先か」というやつですね。

そんな中、最近こんな研究発表がありました。

当時50歳代60歳代だったイギリス人およそ8000人のその後を調査したところ、普段1日6時間以下の睡眠の人は、7時間以上睡眠の人に比べて、約30年後に認知症と診断される確率が30%ほど高かったそうです(「ネイチャーコミュニケーションズ」 2021年4月)。

この結果をもって断定することはできませんが、認知症発症の30年近く前から症状が出るとは考えづらいので、やはり睡眠不足が認知症の発症を促すのではないかと思われます。

認知症を引き起こす原因物質に睡眠がもたらす作用

認知症のタイプの中で最も多いのがアルツハイマー型認知症といわれるものです。

このアルツハイマー型認知症の原因物質の一つといわれているのが、脳内で発生する「アミロイドβ」と呼ばれるタンパク質です。

このたんぱく質はいわば脳の老廃物ですが、これは通常、主に睡眠中に除去されます。

睡眠不足の状態ではその除去する機能が十分働かず、このたんぱく質が脳内に蓄積し、アルツハイマー病などの認知症になりやすくなるのではないかと考えられています。

もちろん、老化(加齢)もこのたんぱく質の蓄積を進めます。

夜更かしする人は認知症になりやすい?

上記のように、睡眠の状態それ自体が直接的に認知症を引き起こす要因になる他に、間接的な発症要因になることもあると考えられます。

夜更かしすることで、おなかが空き、ついおやつや夜食を食べたりしてしまいますよね。夜更かしが肥満、ひいては糖尿病や高血圧につながり、それが認知症を発症するリスクを高めるというわけです。

糖尿病や高血圧は認知症発症のリスクファクターです。

短時間睡眠では、ホルモンの作用により空腹感を高め、また満腹感を下げることがわかっています。つい食べてしまうのにはこのようなメカニズムがあったのです。

起きている時間が長いと消費カロリーが多くなるから痩せるのでは?と思ったりもしますが、実は結果は逆に働くことのほうが多いようです。

睡眠障害と認知症の悪循環

睡眠障害と認知症には一方向の影響だけではなく、相互に影響を与えている可能性もあります。

先に書いたように、認知症自体の症状の一つとして、不眠などの睡眠障害があります。

認知症によって脳内の体内時計を司る場所に病変が発生することで、昼夜逆転などの睡眠障害が起こりやすくなったりします。

認知症が原因で、睡眠時間が短くなったり睡眠の質が悪くなったりして脳内に発生する認知症の原因になる物質を除去する機能がしっかり働かず、認知症を悪化させてしまい、それがまた睡眠障害を強めてしてしまうという悪循環です。

今現在の睡眠状態が老後の健康を左右する

このように、睡眠障害(不眠)と認知症には密接な関連があります。

冒頭の研究結果に戻りますが、この結果から示唆されるのは、50歳代60歳代くらいの中年期での睡眠不足の影響が、老後の認知症の発症のリスクになるということです。

今現在の睡眠の状況は、もちろん今の心身の健康状態や健康感に大きく影響しますが、将来の健康をも左右しうると考えられます。

ですので、老後の健康のためにも、私たちは今この時の睡眠を良いものにするよう対策を講じていきたいところです。

今現在の睡眠は将来の健康のための投資(貯金)になると思って、今の自分に向き合っていきましょう。

認知症予防に「脳トレ」も大事ですが、「質の良い睡眠」への取り組みが、何よりの認知症予防になるかもしれませんね。

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投稿者プロフィール

秋元誠吾
秋元誠吾
鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師、スポーツ科学修士
早稲田大学睡眠研究所 招聘研究員

東洋医学的な身体観に惹かれ、早稲田大学人間科学部卒業後は鍼灸マッサージ師を志し、資格を取得。
これまで、主に介護が必要な方への施術をのべ1万5千人以上に行うと同時に、介護の現場に携わる多くの施術師育成の実績を持つ。
現在は高齢者の睡眠改善のための身体ケアについての研究と実践にも取り組んでいる。

プライベートでは、趣味と実益(メタボ予防と自身の将来の介護予防)を兼ねて、学生時代に熱中した空手を数年前に再開。